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2008年6月

2008年6月15日 (日)

猫岳~本当の最終話~

猫岳~本当の最終話~

「えびまる王、大変です大変です」
えびまるが犬のぬいぐるみを枕にして寝ているところへレオが駆け込んできました。
「むにゃ、むにゃ……もう食べられないよう……」
「なに寝ぼけてるんですかっ!」
レオはえびまるの背中にぎゅう~っと爪を立てて、
「大変なんですっ!」
「なに~、変な鯛なんか食べないぞぅ……」
「変な鯛じゃなくて、た・い・へ・ん・なんです」
「ん~、代返っていうのはひとパパに聞いたことがあるなぁ。してもらったことは100回で、してあげたことは2回なんだって」
「なあ、レオ。代返って何だろう?」
「代わりに返事することでしょ……そんなことどうでもいいんです。大変なんです」
「テレビ見てたらね、ちょんまげのひとが、親分、てぇへんだ、てぇへんだって言ってたよ」
「てぇへんじゃなくて、大変なんです……ん? その、てぇへんなんです」
「そうなのかぁ、そりゃぁ大変だねぇ、レオ。わはは」
ようやく、からかわれていることに気づいたレオは面白くなさそうに顔をしかめていましたが、まあいつものことです。

「ノラックのことなんです」
「ノラックって、青い鳥だっけ?」
「……青い鳥?」
「クッククック、クッククック~青い鳥~♪」
「えびまる王、40歳以上のひとにしか分かりませんよ、それ」
「で、ノラックがどうしたの?」
「しかも全然ダジャレになってないし」

「で、ノラックがどうしたのかなぁ~? レオ」
「はい。えびまる王の代わりに元の世界に行くことになったでしょ」
「うん、そうだったね」
「ノラック、生まれ変わったんですけど、えびまる王の家とはずいぶん遠い所で生まれちゃったんです」
「ほえ」
「しかも、猫お母さんはのらなんですよ」
「ほえ……、うーむノラックという名前を付けたのが悪かったかなあ?」
「どうしてですか?」
「だって~、ノラックってノー、ラック。ツキがない」
「お~、今度はまともなダジャレです。パチパチパチ……って、のんきにダジャレ言ってる場合じゃないです。虹の泉を見に行きましょう」

虹の泉を覗くと、キラキラしたネオンがたくさん見えてきました。
「レオ、知ってるか? あのキラキラした所はお酒を飲むところなんだぞ。ひとパパが大好きなところだ」
「えっ、じゃぁ、えびまる王のひとパパさんがあそこに来るんでしょうか?」
「う~む、どうだろうね。あぁいうところっていっぱいあるからねぇ」
「あ、えびまる王、あそこです。あそこ。あのビルの隙間にノラックがいますよ」

見ると、シャム猫のようだけれども、マークのところが縞の美人猫が子猫たちにお乳を飲ませています。3匹の男の子と2匹の女の子。みんな美しいキジトラです。
3匹の男の子のうちの1匹がノラック。虹の泉から見るとちゃんと分かるのです。

えびまるとレオは毎日、虹の泉を見に来ました。何も起こらずに1ヶ月過ぎたころ。

猫ママが子供たちに話をしています。
「アタシの猫ママはね、それはそれは美しいシャム猫だったのよ。ひとの家にいてね、とても幸せだった。でもね、庭に遊びに来るのらに惚れちまったのさ。猫ママは家出してアタシを産んだの。でも猫パパは浮気者でさ、アタシが生まれるとどこかに行っちゃったんだって。だけど、猫ママはひとママの家に帰らずにアタシを育ててくれたんだ」
子猫たちはきちんと座って話を聞いています。
「猫にはね、ふた通りの生き方があるの。アタシと同じようにのらとして生きるか、ひとに貰われて、ひとの家で生活するかのね。アタシはのらを選んだ。この辺りが好きだしね。飲み屋で働いているひとは良いひとが多くて食べ物にも困らない。暑い日や寒い日もあって、雨が降ると嫌だし、時々は嫌な人間もいる。だけど、なんたって自由よね」
ノラックが首をかしげて、
「ねぇ、ママ。ひとと暮らすっていうのは暑くも寒くもなくて、雨も降らないの?」
「そうね。アタシも猫ママに聞いた話でしか知らないけれど、ご飯に困ったこともなかったし、雨にも濡れなかったらしいよ」
「ねえ、そしたら、ママも一緒にひとのところに行こうよ」
「ダメよ。アタシにはできない。そうしたら、あんた達の猫パパにはもう会えないもの」
そう言うと、猫ママはちょっと離れたところの塀の上にいる大きなキジトラのオス猫を見て、パチッとウィンクしました。

「あんた達はもう乳離れしたんだから、自分たちで考えて選ぶの。のらがいいなら、あまりひとに見つからないようにすること」
猫ママは少し間を開けて、こう続けました。
「そしてね、ひとの家に行きたかったら、良さそうなひとを見つけて、最初は少し離れたところから、にゃって鳴くの。そのひとが気づいて、笑顔で呼んでくれたら……猫好きだったらそうするからね……近づいていって、首をかしげて、すごく小さな声でにゃって鳴くの。それでイチコロだから」

ノラックの頭の中には、微かな記憶がありました。でっかい茶トラ猫が『ボクの代わりに……』と言っている記憶。
ノラックは、そうか、ボクはひとの家に行くんだ。そうなんだ。そう思いました。

そして、ビルの隙間から出て行くと、「にゃぁ」と大声で鳴きました。
「あら~、かわいい子猫~」通りかかったおばさんがすぐそばでしゃがみ込んで、頭を撫でてくれました。
「にゃ」ノラックは首をかしげて小さい声を出しました。

「えびまる王のひとママって、あのひとなんですか?」
レオは眼を輝かせてえびまるを見ました。
「違う……」

「子猫ちゃん、ウチに来る?」おばさんがノラックを持ち上げました。
ノラックの兄弟たちが道路のそばまで見に来ました。
それに気づいたおばさんは、
「あら~いっぱいいるのねぇ……みんないらっしゃい」
そう言うと近くに捨ててあった段ボール箱を組み立て始めました。
4匹の子猫がビルの隙間の奥を振り返ると、猫ママは何も言わずに見つめています。
塀の上の猫パパを見ると
「この人間なら、大丈夫そうだぞ」と言って、大きなあくびをしました。

「あぁ、えびまる王、みんな箱に入っちゃいました……」
「そうだねぇ……でも、まあ、これでもいいんじゃないのぉ」
えびまるとレオはその後もずっとノラックを追いかけて見ていました。
ノラック達はおばさんの家に行くと、写真を撮って貰いました。そして、おばさんはその写真をパソコンで送っています。

「ほほぉ、そういうことか。もう大丈夫だ。レオ」
「どうしてですか? あれは何をしてるんですか?」
「レオ、ボクはね、猫だけどブログっていうものをやってたんだ。だからインターネットには詳しいんだ」
「医者の卵を捕まえる網ですか?」
「なんだ、それ?」
「インターン・ネット……」
「23点」

みなさん、もうお分かりですね。ノラックはちゃんとえびまるのひとパパとひとママの家に行くことになりました。

ねこの国。
「えびまる王、良かったですね。……でも、えびまる王が帰らなくて良かったんですか?」
「なあ、レオ。憎まれっ子世にはばかるって知ってるか? ボクが帰るのはこの次でいいんだ。それにさ、ここで、レオにダジャレの神髄ってのを教えてやんなきゃならないし」
「そりゃぁ、しんどいですねぇ、…しんどい…しんずい……」
「15点……これじゃ、この次にも帰れそうにないな」

猫の国にみんなの笑い声が響き渡りました。

-----命名 『天衣無縫丸』
Ten001

天衣無縫丸。 略して「てんまる」です。
そのうち「てんまるのブログ」も始める予定ですが、
当分は「酔眼写真塾(猫の穴)」で成長の様子をお伝えします。

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