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2008年4月

2008年4月25日 (金)

猫の国3-04

Ebi121
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

4)
 猫の国には、虹の泉と呼ばれている小さな池があります。とても透き通った綺麗な水で表面は鏡のようです。
この泉を覗くと、こちらの世界が見えます。少しのんびりしたくて、帰らなかった猫たちも時々ここにやってきます。そして、元の世界のひとパパやひとママやひと兄弟や、猫友達の様子を見るのです。
ここで元の世界を見て、前の王様のようにまた帰ることにする猫もいます。いつでも好きな時に戻れるのです。違う猫に生まれ変わってなので、前のひとパパやひとママは気がつかないかもしれないけれど、でもちゃんと戻れるのです。モモのように。

 いろいろな猫がいます。例えば、帰っても毎回のら猫になる猫です。
「そりゃぁ、猫の国は腹もへらないし、ひどいことをする人間もいないし、雨も降らないし、寒くも暑くもなくて快適だけどよ、やっぱり、あれだな、自力で生きるっていう、あれがいいんだな。うんうん」

 毎日毎日、虹の泉を覗き込んで、いろいろなところを見ている猫がいました。
ある日、
「おっ、見つけた。うひょぉ」と叫ぶと、元の世界の入り口に飛んでいきました。
なにが見えたんだろうと見てみると、そこにはとても綺麗なメス猫が映っていました。

くすっとレオが笑いました。
えびまるは、がはははははと笑いました。
何だ? 何があった? 大勢の猫たちが集まってきて大笑いです。
みんなの笑い声がいつまでもいつまでも猫の国に響きわたりました。

(終わり)

-------------------
えびまるが亡くなって落ち込んでいるとき、友人がブログに、えびまるは猫岳に行って修行をするのだと書いてくれました。どんな修行なのだろう? と、そのブログのコメントに書き始めたのがこの話です。だんだん楽しくなってきて、ここで続けるようになりました。

思いつくままに書き飛ばしてきたので、プロットのようなものです。きちんと仕上げて、またここか、ホームページにでも全文を載せることにしようと思います。

と、いうことでこのブログはしばらくお休みします。えびまるのひとパパ(じゃんぼよしだ)のブログにも遊びにきてください。のら猫写真とバカ話炸裂のトコロですけれど……

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2008年4月24日 (木)

ねこの国3-03

Ebi120
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

3)
「えびまる王、えびまる王、起きてください。仕事ですよ」
お付き猫3匹が起こしにきました。
「う~、お腹痛いから休む」と、えびまる。
「あ~、もう、何度言ったら分かるんですか。お腹が痛いわけないでしょ。もう死んでるんだから」
3匹のお付き猫たちは、無理やり犬のぬいぐるみをえびまるに着せました。
「わぁ、えびまるさん、すごいすごい。みんなすごく怖がりますよ」
レオが拍手をして褒めると、
「そうかぁ? えへへ、いっちょやったるか」えびまるはその気になったようです。ひとりでどすんどすんとシャドーボクシングを始めました。

「今度の王様は単純だな」
「レオ君は扱い方を知ってるみたいだな」
「うんうん、レオ君には王様と一緒にいてもらおう」

さあ、えびまる王の初仕事です。犬修行場では説明が行われています。
ドアの後ろでレオがえびまるに
「がんばってくださいね」と言うと、
「まっかせなさーい。体当たりでみんなぺちゃんこにしてやる。うひひ」
なんだか嬉しそうです。
レオにはえびまるが王様に選ばれた理由が分かるような気がしました。

係員猫がえびまるに合図をして、ドアを開けました。
えびまるは、ドスンドスンと四股を踏んで、部屋に入っていきました。
「きゃぁ」「うひゃぁ」猫たちが逃げ惑います。
えびまるは、猫たちをうまく追い立てて一箇所に集めました。そうして、ひとかたまりになってぶるぶる震えている猫たちの真正面でギロリと見回すと、両手を広げて、まるで熊のように立ち上がりました。

「うわぁ、こりゃすごい」
「うーむ、さすがだな」
お付き猫や係員が感心して、ドアの覗き穴から見ています。
「ボクだったら、絶対に気絶してます」と、レオ。

 熊のように立ち上がったえびまるは、ここで、とどめだと考えました。
そして大声で、
「にゃぁーーーーーー」

どどどどど……ドアの向こうで、こける音が聞こえました。

(続く)

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2008年4月23日 (水)

ねこの国3-02

Ebi119
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

2)
「ここが、えびまる王の部屋です」
お付き猫がドアを開けて、えびまるとレオが先に通されました。
「ぎゃー、犬だぁぁぁ」レオが叫んでえびまるの後ろに隠れて、えびまるのお尻にぎゅーっと爪を立てました。
「さっきの犬だ……。でも動かないぞ」
レオが恐る恐る覗いてみると、犬はふにょっとしていて、確かに動きません。
「当たり前です。ぬいぐるみですから」お付き猫が言います。
「ぬいぐるみ?」
「はい、ここは猫の国ですよ。犬がいるわけないでしょう」
「でも、さっきはあの犬、動いてた……」レオは不思議そうにお付き猫を見ました。
「王様が中に入って、犬の役をしていたのです。明日からはえびまる王が入るんですよ」
「ほぇ? 王様って偉いんじゃないの? どうして王様がそんなことしなきゃならないんだ?」えびまるが不満そうな顔をすると、
「いいですか? そういう他猫が嫌がることをするから、王様は偉いんです」
「ほぇ……」えびまるが分からない顔をしているので、3匹のお付き猫が次々に話し出しました。
「私たちは猫ですよ。みんななまけものに決まっています」
「何もしなくていいのが、猫の国のいいところ」
「王様が偉いのはみんなが嫌がることをするから」
「何もしないで偉そうにしているのは人間くらいのものです」
えびまるが、あわてて、
「あー、君達、だれか王様にならないか?」と聞きましたが、
「まっぴらごめんです」
「それでは、私たちは昼寝してきますから」
そう言って出て行ってしまいました。

「あれだけでっかいと、そうとう怖そうな犬になるだろうねえ」
「うはは、明日から来る猫たちはかわいそうだね」
そんな話をしながら。

レオはびくびくとぬいぐるみに近づいて、ちょんちょんと触っていましたが、
本当にぬいぐるみだと確認すると、
「うわぁ、えびまるさん、すごくよく出来ていますよこれ。ちょっと着てみませんか?」と、持ち上げて見せました。
「うー、明日でいいよ。明日で。それより、ご飯ご飯」

えびまるとレオはお腹いっぱいご飯を食べて、ぐっすり眠りました。

(続く)


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2008年4月22日 (火)

ねこの国3-01

Ebi118
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

猫岳 第三章 「猫の国」

「腹へったよう」
王様になったえびまるが王冠をだらしなく斜めに頭に乗せて、へなへなと座ってずうっとぶつぶつ言っている間に、猫たちはみんな元の世界に戻るか猫の国へ行くのかを決めて、それぞれのドアに行きました。
残っているのはレオと王様の付き猫3匹だけです。
「さあ、えびまる王、行きますよ」
「腹へって動けないよう」
「まったく、何言ってるんですか。腹なんか減るわけないじゃないですか。気のせいですよ気のせい」
「ほぇ? 気のせい?」
「猫の国には食べ物もあって、味もするし、おいしいですけれど、食べるのは趣味みたいなもので、食べなくたって死にません。当たり前でしょう? もう死んでるんですから」
聞いていたレオが言います。
「ボクは一生懸命でお腹のこととか忘れてましたけれど、そう言われてみるとお腹空きませんね」
「さぁ、行きましょう」お付き猫の一匹がえびまるの王冠をまっすぐに直して言うと、
えびまるはしぶしぶという感じで立ち上がりました。

 猫の国へ入ると、そこは一面の草原。
猫草や猫じゃらしの草原。どこまでもどこまでも続いています。
ところどころに木が生えていて、草むらや木の枝や木陰で猫たちが気持ち良さそうに昼寝をしています。
そして丘の上には白いお城。

(続く)


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2008年4月21日 (月)

えびまるのキラーポーズ

Ebi117
えびまるのキラーポーズです。
このポーズさえすれば人間はメロメロになると思っていたようです。
(実際メロメロでしたけれど)

でも知らない人はとても怖くて、お客さんがくると脱兎の如く逃げて、隠れます。
1時間でも2時間でもずーっと隠れています。
お客さんが帰って「もう大丈夫だよ、出ておいで」と呼んでも、しばらく出てきません。
うーむ、信用がなかったのだなあ。

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2008年4月20日 (日)

えびまるのお風呂

Ebi116
えびまるはお風呂が好きでした。
と、いっても洗ってもらうのは大嫌い。
シャンプーの時など「みなさ~ん、ボクはひどいコトをされていま~す。助けてくださ~い」とでもいうように、大声で叫び私の腕になかなかひどい引っ掻き傷をつけてくれました。
なので、えびまるのシャンプーは生涯で3度だけ。まあ、猫はきれい好きで自分でなめるので無理にシャンプーしなくていいんですけどね。
そんなワケでしばらくはお風呂に近づかなかったんですけれど・・・
怖さを忘れたころ、予備の猫草がお風呂の窓のところにあることを見つけたのです。

それから一緒にお風呂に入るようになりました。それでももちろん濡れるのは嫌なので、写真のように半分だけしたフタの上で大好きな草を食べて、ぬくぬくしているのですけれど。
私は、この状態で湯船につかり、本を読みます。えびまるは草のお礼と甘えで、本と顔の間に頭を突っ込んでスリスリして読書を妨害するのですが、そのうち寝ます。
時々尻尾をお湯につけてブラブラ振っていることもありました。気付かないんですねえ。

えびまるにも、私にも至福のお風呂タイムでありました。

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2008年4月18日 (金)

今日も昔の写真で

Ebi115
今日も昔のえびまる写真でお楽しみください。

えびまるがこのブログをやっていた頃、「えびまるはみがきる」でご紹介した別バージョンの写真。
ホントは歯磨きではなくて口の周りをゴシゴシするのが好きだったんですけど・・・
いつもはしてあげていたんでが、自分でしなさいと言われて挑戦しているところ。
とっても幸せそうな顔ですねえ。
この歯ブラシはえびまる専用でした。・・・使い込んだ感じに見えますね。

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2008年4月17日 (木)

えびまるの写真

Ebi114
猫岳第3章はもう少しお待ち下さい。

この写真は「ねこ鍋ごっこ」をしたときの写真。
えびまるは当然入れなかったのですが・・・
えびまるのご飯用の器みたいにしか見えませんねえ。

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2008年4月14日 (月)

モモ2-08

Momo04_2
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

8)
 アタシには分かったの。この人だって。ごつい体で角刈り頭の怖そうな人だけれど、でも分かった。この人のところに行くんだって。だからアタシは男の子の腕からぴょんと飛び降りて、その人の足元にすりすりってしたの。そしたら、その人はしゃがんでアタシの頭を撫でた。アタシはせいいっぱい背伸びをして、膝にすりすりってした。


「お帰りなさい、あら、猫?」彼女の顔が輝いた。
「うん、そこの公園で、小学生の男の子がいてね……」
説明しながら、猫を渡すと彼女は慣れた手つきで抱いて鼻を擦りつけた。
テレビでニュースが始まった。
『5月19日、今日のニュースです…』
はっとした。ボクシング記念日だ。モモが帰ってきた。そう思ったけれども、自分はこう彼女に言った。
「名前、付けてくれる?」



 猫の国の虹の泉。小さな泉を覗いている2匹の猫がいる。
鏡のように澄んだ泉には、暖かい灯りの部屋で若い男女に代わる代わる抱かれて、撫でてもらって、お腹いっぱいになって、喉をごろごろさせている白い小さな猫の姿が映っている。

「良かったなぁ、な、レオ」
「はい。本当に。モモさん、ちゃんと戻れましたね。えびまる王」

(第2章モモ 終わり)

-----------------------------------

あまり推敲もしないで書き飛ばしてきましたので、かなり雑な文章になってしまいましたが、お楽しみいただけましたでしょうか? おかげさまでランキングボタンもたくさん押していただいています。ありがとうございます。


この後第3章に続く予定ですが、少しお休みします。

もしも、登場させたい猫さんがいましたら、名前とどんな性格だったかをお知らせください。お約束はできませんけれど、この後のお話に入れてみます。


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2008年4月13日 (日)

モモ2-07

Momo03
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

7)
 5月病というやつだ。自分には自信があった。営業でもなんでも男の中の男に出来ないはずはない。軟弱男などに負けるわけがない。そう思っていた。
入社して1ヶ月間、自分の指導役は茶髪のホストみたいな男だった。一緒に得意先を回ったのだが、彼は取引先で仕事の話など全くしない。それどころか受付や事務の女性とくだらない話をして笑っている。こんなヤツなどすぐに追い越せる。そう思った。
5月になって一人で営業に回り始めたのだが、話を聞いてすらもらえなかった。
こんなはずはない。そう思って気合を入れれば入れるほど空回りする。
ただ、今日は金曜日だ。毎週金曜日は彼女が夕食を作りにきてくれる。彼女の作る食事は美味しい。彼女との会話は楽しい。少し元気になって家路を急いだ。

 小さな公園の角を曲がると卒業と同時に引っ越した新しいアパートが見える。普段は暗い窓しか見えないが、今日は電気が灯っているはずだ。
暗くなり始めた公園のベンチに座っている小学生くらいの男の子に目が留まった。白くて小さな猫を抱いている。
気がつくと、声をかけていた。
「かわいい猫だね」
男の子はびっくりしたように自分を見ると、
「ここにいた。連れて帰ったら、お母さんが戻してこいって」

(続く)


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2008年4月12日 (土)

モモ2-06

Momo02
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

6)
 気が付くとアタシは小さな公園でにゃぁにゃぁ鳴いていた。早くだれかに見つけてもらわないとお腹が空いて死んじゃうかもしれない。
にゃぁ、にゃぁ、力いっぱい呼んだ。
しばらく鳴き続けているとランドセルを背負った男の子がやってきた。
「あっ、子猫だ」そう叫ぶと男の子は駆け寄ってきてアタシを両手で持ち上げた。
アタシは男の子の両手にすっぽりと隠れるくらい小さかった。
頭の中で『違う』っていう気がしたけど、すごくお腹が空いていたので、アタシはその男の子の鼻をチロっと舐めてあげた。
「真っ白いんだね。小さいね。お腹空いてるの」
そうアタシに話かけながら、男の子は家に向かって歩いた。

「ただいまー、お母さんお母さん」
「お帰り」
男の子がそっと両手を前に上げて「お母さん、猫」と言った。
「何、その猫」
「公園にいたの。お腹空いてるみたい」
お母さんはしばらくアタシを見ていたけど、
「ダメ、家では飼えないわよ。ご飯あげてもいいけど、公園にもどしてらっしゃい」
そう言うとアタシのことも、男の子のこともいっさい見ないというように、台所に向かった。

(続く)


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2008年4月11日 (金)

モモ2-05

Sora01
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

5)
 モモの息子がいる2軒隣のおばさんが、ペット葬儀場に連絡して、全て手配してくれた。自分は言われた通りにそこへ行きモモを見送った。晴れ渡った青空に煙突からゆらゆらと透明な水蒸気のような陽炎が登っていった。帰りに空を見上げると、さっきまでは雲ひとつ無かった空に白い綿雲が浮かんで夕日に赤く染まっていた。

甘えたくなるといつも膝にタッチした右手の骨と、時々自分の手を甘咬みした歯をロケットに入れてペンダントにした。バイクに乗って海まで走った。
「モモ、これが海だ。始めてだろう?」
砂浜を歩いた。
「モモ、でっかい猫トイレだ。どこでしてもいいぞ」
砂浜に寝転んだ。
夏の太陽がまぶしくて涙が流れた。止め処なく流れた。
自分は男の中の男だ。強い。関東大学選手権3位の実力だ。でも、立ち直れないかもしれない。そう思った。

 翌年の4月、無事に卒業した自分は就職した。そして彼女ができた。人間の、だ。
当然だが、彼女から告白してきた。卒業式の日だった。
「先輩、去年の夏頃から変わりましたよね。なんだかやさしい感じに」
1年後輩の彼女はそう言った。男の中の男はやさしさだって持ち合わせているに決まっている。気付くのが遅いのだ。
きっかけはというと、年末に、ちょっとやっかいな講座のレポートで困っているのを知って、アドバイスをしてやった。どのゼミに進むべきかの相談にも乗った。もちろんただそれだけのことで、自分からアプローチなどしたわけではない。
彼女は実家に猫がいると話した。自分はモモという猫がいかに素晴らしい猫であったかを教えてやった。話していると涙が出そうになったのにはびっくりしたが、我慢した。
モモの話を聞いている彼女の顔はとてもやさしい笑顔だった。

(続く)


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2008年4月10日 (木)

モモ2-04

B10
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

4)
 モモはのんびりした猫だった。紐の先を結んだだけの即席猫じゃらしは大好きだったけれど、走り回ってじゃれつくようなことはせず、座ったまま手だけで遊んだ。自分の膝の上が好きだった。膝に乗ってすぐに寝るので、動けなくて足が痺れた。夜は首の上に乗って寝た。ちょっと苦しかったけれど冬は暖かかった。

 桃の季節が2回過ぎて自分は4年生になっていた。就職の面接に行ったその日は暑かった。自分は男の中の男であり、どのような厳しい仕事であろうとやり抜く自信があると堂々と述べた。帰りにはもう受かった気になって、来年からはモモに毎日上等なご飯を食べさせてやるのだと、電車で想像した。まだ半年も先なのに駅前の不動産屋でペット可の貼り紙を探した。

なのに。

 その日の夜、動かなくなったモモを膝に抱いて号泣していた。美しい毛並みに涙が何粒も何粒もこぼれて落ちて染み込んだ。
もっともっと遊んでやればよかった。一番高い猫缶、一度くらい買ってやればよかった。気恥ずかしくてペットショップで本物の猫じゃらしを買えなかった。
もっと、もっと……。
ごめんね。ごめんね。ありがとう。ありがとう。

(続く)

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2008年4月 9日 (水)

モモ2-03

Cat049
【このお話は続きです。初めての方は「猫岳1-01」から読んでください】

3)
 コンビニへ弁当を買いに出たとき、2軒隣のおばさんが声を掛けてきた。
「学生さん、学生さん、アンタんちの猫、お腹大きいでしょ」
3日前から、鉄製の小さな門に『迷い猫探しています』という写真付きの看板が付いている家のおばさんだ。最初見たとき、モモだったらどうしようと思ったのだが、白に茶色のブチがある猫の写真だった。
「実は、さっき産んだんです」
「あー、やっぱり。困ったわね」
言われて気づいた。確かに4匹も飼い続けるわけにはいかない。もっと増える可能性だってあるのだ。
「あの、猫ちゃん、いなくなったんですか?」
「そうなのよ、5日前から帰ってこないの。アンタんちの三毛ちゃんとも仲が良かったのよ」と言うと、すぐに
「あ、ウチの子、男の子だけど、ちゃんと去勢してるから、違うわよ」と付け加えた。

 それからおばさんは、2ヶ月は仕方がないからちゃんと面倒を見て、飼ってくれるひとを探すこと、そしてそれが済んだら、モモの避妊手術をしたほうがいいと言った。
「避妊はかわいそうな気もするけれど、そうしたほうが猫にとっても負担にならないし、長生きするんだからね」そう教えてくれた。
そして、最後に、
「そうね、2ヶ月して、ウチのが帰ってこなかったら、1匹もらってあげる」
そう言って笑った。少し寂しそうな顔だったけれど。

 残り2匹の行き先もすぐに決まった。我が友たち、柔道を愛する本物の男は猫好きが多いのだ。3匹の子供たちとの別れは自分にとっても、もちろんモモには、とても寂しく辛いものだったが、私たちの愛は短期間で乗り越えるのに充分だった。
一時は母親の貫禄を漂わせていたモモだったけれど、しなやかで若々しい美しさを取り戻していた。

(続く)



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2008年4月 8日 (火)

モモ2-02

Momo01
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2)
 5月19日、とんでもないことが起こった。その日はボクシング記念日だったので19日で間違いない。尊敬する白井義男が日本人で始めてチャンピオンになった日だ。モモの浮気が発覚したのである。子猫を3匹産んだのだ。もちろん自分に覚えは無い。

 その日、授業は午前中だけで練習も無かったので、12時半頃帰宅した。いつものようにバイクの上で「おかえり」と言ったモモだったが、部屋に入ってから、どうも様子が違う。いつになくぐるぐると部屋の中を歩き回って、やみくもににゃぁにゃぁと鳴く。
やがて自分が脱ぎ捨てたTシャツの上で落ち着くと、お尻のあたりをやたらと舐め始めた。
その時、自分はようやく気付いた。家に来てからずいぶんと早く太るなあと思っていたのだが、そうではなかったのだ。慌てて田舎のお袋が野菜などを送ってきたダンボール箱を引っ張り出して古いタオルを敷きモモの横に置いた。
素直に入ったモモは自分を見つめて、少し辛そうな顔をした。
「ごめんなさいね、でもアタシには貴方しか頼るひとがいないの」そう言っているように見えた。
初めての経験だった。モモは自分の顔をずっと見つめていたが、
「にゃ」と鳴いて1匹めの子猫を産むと、すぐにぺろぺろと後始末をする。
相手が猫だとはいえ、面白くない気持ちがしていたのだが、その神々しい様子に接したら、そんなことはすぐに忘れて「がんばれモモ」と、彼女の頭と背中をやさしく撫でていた。
モモは、白黒の猫2匹と白に三毛のブチがある子猫を1匹産んだ。
それが始めての出産だったのか、何度目かなのかは分からないけれど、やり方は全て知っているというように、モモは3匹の子猫の体を丹念に丹念に舐めて、お乳を与えるためにゆったりと横になった。
子猫たちは、まだ目を閉じたままだが、4本の足と尻尾をプルプル震わせながら、必死で歩きモモのお乳を探りあてると不器用にではあるけれど、しっかりと咥えて静かに飲み始めた。
ちょっと複雑な気もしないではなかったが、この日にモモと自分は本当の絆で結ばれたなと思った。

(続く)



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2008年4月 7日 (月)

モモ2-01

Cat046
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第2章 モモ

1)
 こんなに辛いとは思わなかった。
誰もいないのを幸い、ひとりぼっちのアパートで泣いた。号泣した。慟哭した。
自分は柔道部元主将の大学4年生で、強面で通っている。1年生の秋に祖父が亡くなった時には涙が出なかった。なのに、この寂しさは何なのだろう。

 毎日、柔道部の練習から帰ると、モモは自分のバイクの上で待っていた。シートにぺったりとお腹をつけて、そして自分の姿が見えると、上目遣いに、「おかえり」と、鳴いた。
昼間はどこか他のところで遊んでいるのだろうけれど、夜の間一緒に過ごして、朝出かけるときには、バイクに飛び乗って、
「これに乗って、どこかに連れて行ってよ」というように、にゃぁと鳴いた。

 妙な言い方だが、軟弱な男など男ではないと思っている。ナンパなどしたことがない。本物の男には女の方から寄ってくるのだと信じている。未だに彼女がいないのは見る目がある女性がいないだけなのだ。
猫は本能で生きているので本物の男を見る目があった。2年生になって柔道部の新入生歓迎コンパでしこたま飲んだ帰り、その美しい三毛猫に出会った。
飲みすぎて道端に座り込んでいた自分に、
「大丈夫?」と、膝にすりすりしてきた。
桃の木の下で、ピンク色の花びらがひらひらと散って、上目遣いに自分を見る猫の顔に降りかかった。モモと名づけた。

 女に甘い顔などしたことはないが、猫には弱い。白状しておく。

 モモはアパートまでついて来た。かなり酔っ払っていたので、すぐに寝てしまったが、朝起きるとモモがいた。会ったその日に男の部屋に泊まる女などとんでもないが、猫だからいいのだ。いや、自分とモモは運命の糸で結ばれていたのだから、あたりまえなのだ。
その日からモモとの生活が始まった。

(続く)

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2008年4月 1日 (火)

猫岳1-08

Ebi113
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8)選択

 3匹が王様のところへ行くと、
「実はな、お前たち3匹にはお願いがあるのじゃ」と、言いました。
「修行の様子は見せてもらった。お前たち3匹にはリーダーの素質があると思うのじゃ。そこで、お前たちのだれかに猫の国の王様になってほしいのじゃ」
ハヤテがびっくりしたような顔で
「王様って、あなたじゃないんですか?」聞くと
「いかにもワシが猫の国の王じゃ。ワシはもう60年も王様をやっているのだが、実はな、ワシがひとの世界にいた時に一緒に暮らしていた女の子がおってな、その子が小学校6年生の時にワシは死んでしまった……」
王様は懐かしそうに話し出しました。
「それから60年、その女の子はやがて大人になり、幸せな人生を過ごしていたんじゃが、先日、旦那さんが亡くなってな、寂しい一人暮らしになってしもうた。ワシはそこへ行きたいのじゃ」

ハヤテはしみじみした顔で聞いていましたが
「王様が戻りたいように……僕は、すぐにでも戻りたいんです」
「うむ、そうか」
王様が頷くと、ノラックが
「俺は人間なんて嫌いだから、元々猫の国に行くつもりだったし、でも、俺に王様なんて出来るのか?」
王様は言いました。
「そうじゃな、ノラック。ここに修行に来る猫はいろいろじゃ。人間が好きで、戻りたいと考えている猫もたくさんいる。そういう猫たちの気持ちも分かるようにならないといけないな」そして、
「えびまる、お前はどうじゃ?」と聞きました。
「王様って、おいしいもの食べられるぅ?」
ハヤテとノラックは吉本新喜劇のようにズルっとこけて見せました。
「食えるとも」王様が答えると、
「じゃぁ、王様やる」えびまるが簡単に言うと、ハヤテが慌てて、
「えびまる、おまえ、帰らなくていいのか?」と聞きました。
するとえびまるは、ノラックに向かって、

「なあ、ノラック。ボクの変わりに、ボクのひとパパとひとママのところへ行ってみなよ。そしたらノラックもきっと、人間ってのもそう悪いヤツばかりじゃないって分かる」
ノラックが黙っていると、
「でもさぁ、もう一回死んじゃったら、交代してね。その頃はひとパパもひとママも老いぼれてるから、ボクが行ってやんなきゃだから」
そう言って、えびまるがにっこりと笑うと、ノラックは
「えびまるがそう言うんなら、ちょっと怖いけど、行ってみるよ」

「よし、決まりじゃ。今から猫の国の王はえびまるじゃ。楽しそうな猫の国になりそうじゃな。はっはっはっは」
そう言うと王様は王冠をえびまるの頭にかぶせて、
「それでは行ってきま~す。さあ、ハヤテ、ノラック、一緒に行こう」
嬉しそうに手続き所に向かって走って行きました。

「えびまる猫王様、ご即位~」
3匹の猫が大きな声で叫びました。

「腹減ったよぅ」
えびまる王、最初の言葉です。

第一章 『猫岳』  終

第二章 『モモ』に続きます。 (ちょっとお休みしてからです)

    [写真は“お腹減ったよぅ”のえびまる]

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猫岳1-07

Cat041
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7)猫王

「やあ、みんなよくやったな」
そう言うと猫の王様はニコニコして猫たちを見回しました。
「これで修行は終わりじゃ。既に知っている者もいるじゃろうが、元の世界に戻るか、猫の国へ行くか、後はその手続きをするだけじゃ。みんな、おめでとう」

「元の世界へ帰りたい方はこちらの赤のドア、猫の国へ行きたい方はそちらの青いドアです」
係員猫が説明しだすやいなや、ものすごいスピードで赤いドアを走り抜けて行った猫がいます。
なんと、あのすましやでのんびり猫のモモです。
まるで人が変わった……いいえ、猫が変わったようなダッシュでした。

「うひゃぁ、すましてて嫌なやつだと思ってたけど、よっぽど好きなひとがいて早く帰りたかったんだな……」
ハヤテが言うと、ノラックは
「変なヤツ、あんなにいい女なのに人間に首ったけなんて信じらんねえな」と呟きました。

ハヤテがレオに、
「さぁ、行こうか」と言うと、レオは
「僕も帰りたいんですけど、ちょっと考えたんです。僕は皆さんに助けられてここまで来れたけれど、弱虫は治ってないから、猫かご屋さんで体を鍛えたり、修行場の係員をして、えびまるさんやハヤテさんやノラックさんみたいな、立派な猫さんをたくさん見て勉強してから帰ることにしようと思うんです」

猫たちがぞろぞろと動き出すと、王様が
「あー、えびまると、ハヤテとノラックはちょっと残ってくれたまえ」と言いました。

ハヤテが
「うわ、ズルしたの怒られるのかな? 僕、帰れないのかな?」
心配そうです。
「みんな合格だって言ったじゃん。大丈夫大丈夫」
ノラックが言います。
「腹へったようぅ」えびまるは何も考えていない様子です。

(続く)       [写真はレオのイメージです]

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